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特徴的なラーメン店は非日常を味わえるコンテンツになりつつある
このところ、外国人観光客とそれ以外の料金に差を付ける、いわゆる「二重価格」をめぐる炎上が相次いでいる。 【画像】二重価格を導入している、日本の「世界遺産」 なぜ、ここまで燃え上がるのか、その構造と回避策を探ると、「価格に対する顧客の価値観」が見えてきた。
広がる「二重価格」 世界遺産にラーメンに遊園地
1月に大阪市内のラーメン店「王道家直系 我道家 OSAKA本店」での二重価格が問題視された。この店の券売機は、表示を日本語と外国語で切り替えられ、日本語の画面では1000円台の商品がラインアップされているが、外国語版では2000円台のラーメンが並んでいる。 店主はこの価格差について、商品の仕様が異なることを理由とし、券売機にもその旨を書いているため、「外国人価格を設定しているわけでも、外国人差別でもない」と説明している。 ただ、この件が話題になる前後に、中国人客が店内トラブルを起こしたとして、今後は中国人客について出入禁止にする方針をSNSで示していたことから、排外的な考えからの差別化ではないかと批判を浴びた。 国宝で世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)でも、入場料の二重価格化が進められている。姫路市長はかつて、外国人観光客のみを値上げ対象とする可能性を示唆していたが、その後に見送り、「市民以外」に着地した。3月1日以降、市民は1000円、市民以外は2500円となる予定だ。 姫路城では断念したが、海外観光客向けのインバウンド料金を設定している観光施設は、すでに日本国内にも存在している。2025年7月に開業したテーマパーク「ジャングリア沖縄」では、“日本在住者”を判断基準として、1日パスに6930円と8800円の価格差を設定している。公式Webサイトには「ご購入の際には、日本在住の住所、電話番号の登録が必要」と書かれている。
富士そばの対応は、なぜ支持された
こうした二重価格の是非は、このところよく話題になりがちで、「差別ではないか」という声がある一方で、「海外では普通」との反応も見られる。また、オーバーツーリズム(観光公害)の文脈から、旅行者とそれ以外の扱いを分けても仕方ないという風潮は、日に日に強まっている。 最近では、立ち食いそばチェーン「富士そば」の店舗で、「旅行者の方は、ランチタイムの来店をご遠慮ください。当店は、この近辺で働く人たち・学ぶ人たちを優先します」との張り紙が掲示されていたと話題になった。 ただ、こちらに対しては、スピーディーな提供が求められる業態ということもあり、好意的な意見が多い印象だ。 このように、あらゆる店や施設において、二重価格や扱いの差が目立つようになった。そこに加えて、昨今よく聞かれるようになった、自国優先・排外主義的な価値観も相まって、区別して差を設けることに対しては、一定の支持が広がっている。
価格差を設ける「基準」 どう定義するのか
そこで気になるのが、そもそも何をもって「それ以外」を定義するかだ。たとえ区別したとしても、その判断基準に妥当性があれば、違和感なく受け入れられるのではないか。大切なのは「その差別化に文脈があるか」である。 例えば姫路城の場合は、ひとまず「姫路市民」と「市民以外」に分類した。これは本人確認書類で、すぐに判断できる。また、市が管理・運営を行っていることから、市民に対しての住民サービスとして、安価に設定することには妥当性がある。 このような「市民割引」は、公共施設であれば、納税者への還元といった意図が読み取れ、一般店舗であっても近隣に生活するリピーター確保を目的としているのだろうと推測できる。そのため、仮に価格差を付けても、大きな反発が起きにくいと考えられる。 納得できる理由の存在は、排除やペナルティー的な印象を薄める。富士そばの施策が好意的に受け止められているのも、ここがポイントになっているのだろう。仕事の合間に、ちゃちゃっと空腹を満たすことが主目的の店舗であり、「旅先でグルメを楽しむ」といった用途は本来想定されていない。本末転倒にならないように、「お願い」ベースで打診している点がプラスに働いているのではないか。
立ち食いそばとラーメン店の違いは
“目的”の違いは、燃えやすさの差も生む。「日常生活の一部」として利用するか、はたまた「非日常を楽しむため」か。富士そばは明らかに前者だ。それに対して、観光施設は後者と分類できる。二重価格の炎上しやすさは、生活の密着度と無関係ではないだろう。 では、「立ち食いそばとラーメン店の違いは?」と、疑問に思う読者もいるはずだ。あくまで筆者個人の分析でしかないが、日本におけるラーメン店は、もはやわれわれにとってもアトラクションであり、観光地の一種になっているのではないかと考えられる。 ラーメン店では数時間待ちの行列も当たり前だが、立ち食いそばでは並んでも数分が一般的だ。また、問題視された店のような“横浜家系ラーメン”の場合、麺のゆで加減や、油・タレの量を調整できる。 いわゆる“二郎系ラーメン”の店舗で、「ヤサイニンニクアブラカラメ」といった難解な注文で無料トッピングを頼むのと同様に、ある種のスリルとカスタマイズ要素から、ラーメン店にゲーム性を感じる人は少なくないはず。ラーメンは国民食でありながら、非日常を味わえるコンテンツでもあるのだ。
二重価格への反発を弱めるには
さて、ここまで「なぜ二重価格は燃えやすいのか」を考察してきたが、とはいえ昨今の物価高では、価格転嫁したいとの声があっても不思議ではない。また、円安で「安価に行ける観光地」として日本が位置付けられている現状から、為替差で優位にある外国人観光客に目を付けるのも、商売として理解できなくもない。 となれば、どうすれば穏便な着地となるのか。「どこも導入しているから」といった主体性なき二重価格は、自ら火に飛び込んでいるようなものだ。やはり、先ほども言ったように、妥当性を与えられるかが重要となるだろう。 まず考えられるのは「理由を可視化する」ことだ。例えば「観光客のスーツケースの車輪が汚れないよう頻繁に床を清掃するため」「従業員の英会話レッスン代に充てるため」といった説明があれば、気持ちよく払ってくれないだろうか。 インバウンド客に料金の上乗せ理由が伝わり、納得してもらえれば、ハレーションは起きにくい。反対に、説明なしに払わせてしまえば、だまし討ちのような印象を与えてしまい、反発を招く。 インバウンド向けの高価格商品を、別途用意するのも手だろう。問題は「同じ商品なのに、購入者によって価格差が生じる」ことだ。別の商品として売り出すのであれば問題ない。観光地ならば「特製ガイドマップ」をセットにしてもいいだろう。日本ならではの“おもてなし”を付加価値として提供できれば、正当な対価と認識してはくれないだろうか。
快適な購買体験が損なわれていないか
なお、いずれの場合にも、レギュラー商品も通常価格で選べるようにすることを忘れてはならない。選択肢は平等に用意して、あくまで「旅行者が自らの意思で追加料金を払う」という立て付けを保たない限り、批判は免れないだろう。 重要なのは、二重価格そのものというより、無意識のうちに「快適な購買体験」が妨げられているということだ。そして、ひとたび本音が透けてみえると、信頼は失墜してしまう。SNSが普及した現代では、それがさらに顕著に見られるようになった。 Googleのレビューを見ると、外国人観光客によるクチコミ評価も珍しくなくなっている。いくら店側が「日本人だけ相手にしているから」と言っても、翻訳された評価を日本人が読んで、敬遠する可能性もある。 もし外国人からの不評コメントが多数並んでいた場合、どんな印象を与えるだろう。おそらく大多数は「なんか面倒くさそうだから、この店に行くのはやめておこう」となるはずだ。ネットの風評を守るためにも、安易な価格設定は避けた方がいいと考える理由は、こうした点にある。
著者紹介:城戸譲
1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。
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